2014年01月04日

五感で感じる「季節」の移ろい。

72-60.jpg
1月1日は二十四節気の冬至の末候、七十二候では雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)。
一面の雪化粧の大地の下では、春の到来を待つ麦が芽吹き始める時候です。

慌ただしく迎えた今年の正月。 スッカリこの「冬至(末侯)」のことを書くのを忘れておりました。

■自然と向き合えば、自然は私たちに正確な「時や季節」を教えてくれます。
昨年の1月5日の「小寒(初候)/芹乃栄(せりすなわちさかう)」から書き出した七十二候も、この「冬至(末侯)/雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)」の侯で最後となりました。

この一年間「七十二候」の記事を書くことで、私たち日本人には「季節の移ろいの気配」を肌で感ずることができる繊細な感覚があることを改めて認識することができました。
そもそも旧暦の「太陽太陰暦」で書かれた「七十二候」。 現在の太陽暦(グレゴリオ暦)とは微妙なズレが生じるのはアタリマエ。 そしてそのズレを認識しながらも、正確な季節感を五感で感じていたのでしょう。

2010年に日本気象協会が、現在の日本の季節に合った新しい「二十四節気」を作ると発表しましたが、俳句界などからの猛反発を受けて、あえなく断念!
たしかに新しい「二十四節気」を作ることは合理的なことなのでしょう。 公式には使用されない旧暦の「太陽太陰暦」ですが、太陽のめぐりや月の満ち欠けに、新旧はありません。
月と太陽、この2つの天体の動きをほぼ正確に知ることで、私たちはもっと自然に寄り添った暮らしができるはずです。

posted by ツルカメ at 17:36| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月27日

霊獣「四不像」に跨がり、仙人が妖術玄術合戦!

72-59.jpg
今日12月27日は二十四節気の冬至の次候、七十二候では麋角解(さわしかつのおる)。
大鹿が角を落とす時候です。

■霊獣「四不像」
中国語で「麋」とはシフゾウやヘラジカなど大型のシカのことを言うそうです。
中国の南苑(皇帝の狩猟用施設)に生息していた野生の「四不像(シフゾウ)」は、飢餓や義和団の乱で狩猟され、1894年頃に野生個体は絶滅。現在ではヨーロッパの動物園で育てられた個体が、数百頭生息すると推定されているそうです。

この「四不像」という名前の由来は、角がシカ、頸部がラクダ、蹄がウシ、尾がロバに似ているが、そのどれでもないと考えられたことから付けられたという説があります。

■中国三大奇書を凌駕する「封神演義」
中国三大奇書の「西遊記」「三国志」「水滸伝」の面白さを凌駕する奇想天外な伝奇歴史小説「封神演義」。というのがあります(日本でもコミック化されております)。
その主人公が騎乗する霊獣がこの「四不像」! 殷と周の間で繰り広げられた史実の戦いを背景に、仙人や妖怪が飛び交う奇想天外なストーリーですが、なかなか面白いですヨ。
posted by ツルカメ at 22:33| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月22日

「一陽来復」天照大神の復活!

72-58a.jpg
今日12月22日は二十四節気の冬至の初候、七十二候では乃東生(なつかれくさしょうず)。
夏枯草が芽を出す時候です。
夏枯草とはシソ科のウツボグサ(靫草)のことで、その紫色の花穂を夏枯草(カゴソウ)と呼び、漢方の生薬として用いられています。夏枯草には利尿、消炎作用があり、腫物、浮腫、腎臓炎、膀胱炎などに用いるそうです。

■冬至は1年の「終わり」であり「始まり」の日。
1年で最も夜の長さが長くなる冬至。それは太陽の力が最も弱くなることを意味します。そして冬至を境にだんだんと太陽の力が強くなっていく復活の日をでもあります。
このように冬至は、陰(いん)が極まり再び陽(よう)にかえる日という意味で「一陽来復」とも呼ばれております。

■ストーンヘンジで行なわれる「夏至」と「冬至」のお祭り
イギリス南部にある環状列石(ストーンサークル)で有名なストーンヘンジ。
夏至の日に、中心にある祭壇石を結ぶ直線上に太陽が昇ることで有名な遺跡です。太陽崇拝の祭祀場、古代の天文台、ケルト民族のドルイド教徒の礼拝堂など、さまざまな説が唱えられていますが、未だに結論はでていないとのこと。
このストーンヘンジでは、ケルト民族のドルイド教徒によるお祭りが年2回、「夏至」と「冬至」の日に行なわれています。
このドルイド教の信仰は太陽崇拝、輪廻転生等で、日本のアマテラス神話との共通点があります。

太陽神である天照大神が隠れ、世界が真っ暗になった古事記で有名な岩戸隠れの伝説。この神話のテーマも太陽「天照大神」の再生であり、それは冬至を意味しているものだと思われます。

クリスマスはキリスト教とは関係なく、ケルト民族の冬至の習慣を踏襲した行事であり、かのジュリアス・シーザーは紀元前46年に、毎年12月25日を正式に冬至とすることを決めたそうです。

それだけ冬至には強い何かがあるのでしょう。
posted by ツルカメ at 23:00| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月16日

赤い三本線のロングセラー

72-57.jpg
今日12月16日は二十四節気の大雪の末候 、七十二候では鮭魚群(さけのうおむらがる)。
鮭が産卵のため群がって、川を遡上する時候です。

■90年以上変わらぬデザインが信頼の証し!
鮭といったら、「赤い三本線」が目印のマルハニチロのあけぼの鮭缶ですネ!
1910年にカムチャッカ半島の工場で生産されたのが始まりだそうです。もともとは輸出用で作られたものですが、関東大震災の時に被災者に配られたのがきっかけで、日本国内にも広まったそうです。現在は釧路沖のカラフトマスを原材料にし、魚と塩だけのシンプルな製法は昔からほとんど変わらず。そして1920年代に使用された「赤い三本線」「と日の出」マークのデザインもほとんど変わりません。90年以上、食卓で愛され続けたきた「鮭缶」。
永遠のロングセラーの秘密は「変わらぬ良さ」なのかもしれません。
posted by ツルカメ at 22:12| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月12日

日本獣害史上最大の大惨事!「三毛別羆事件」

72-56.jpg
今日12月12日は二十四節気の大雪の次候、七十二候では熊蟄穴(くまあなにこもる)。
熊が寒い冬を乗り越えるため、穴に隠れ冬ごもりする時候です。
ちなみにリスなどは冬眠中に叩いても目を覚まさないそうですが、熊は眠りが浅く小さな物音や匂いなどで目を覚ましてしまうそうです。

■北海道の開拓村を恐怖のどん底にたたき込んだ大惨事!
なんらかの理由で冬眠をし損ねたクマを猟師のマタギたちは「穴持たず」と呼ぶそうです。
吉村昭の小説「羆嵐(くまあらし)」は、その「穴持たず」の凶暴な羆(ヒグマ)を題材にした実際に起きたドキュメンタリー長編です。
日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月、北海道天塩山麓の開拓村に一頭の「穴持たず」の羆が出現したことに始まります。そしてわずか2日間に6人の男女を無惨に殺害。野生の猛獣の前に、なす術のない村人たち。
沈着冷静な吉村氏のタッチがより一層この事件の壮絶さを物語っています。

実際の事件では、旭川の陸軍第7師団から歩兵第28連隊が事件解決のために投入され、将兵30名が出動。そして若い頃に鯖裂き包丁一本でヒグマを倒し「サバサキの兄」と異名を持つ伝説のマタギ「山本 兵吉」が死闘の末、重さ340kg、身の丈2.7mにも及ぶ、エゾヒグマを仕留めます。

本書はドキュメンタリーを越えたドキュメンタリー小説! まさに吉村昭の会心の一撃!!
posted by ツルカメ at 22:32| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月07日

天は我々を見放した!

72-55-A.jpg
今日12月7日は二十四節気の大雪の初候、七十二候では閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)。
天地の気が塞がって冬となる時候です。

■週末は寒波が襲来
週末は暦のとおり、本格的な冬の到来となりそうです。
北海道や東北の上空に12月上旬としては数年に1度の寒気が流れ込んでくる見込みだそうです。
ここのところのポカポカ陽気から一転、北風が冷たく感じられる冬到来になりそうです。

72-55-B.jpg
山中にて直立したまま仮死状態で発見された後藤房之助伍長の像。

■天は我々を見放した!
寒い冬が到来すると思い出すのが、映画「八甲田山」。
1977年の公開時、北大路欣也扮する神田大尉(モデルは神也文吉大尉)のセリフ「天は我々を見放した!」が大流行したものです。

原作は新田次郎の小説「八甲田山 死の彷徨」。
1902年(明治35年)、青森、八甲田山中で、陸軍青森歩兵第5連隊の雪中行軍が遭難。210人中、199人が亡くなった未曾有の遭難事件です。

■想像を絶した絶望の果てに・・・・
新田次郎の小説にしても、映画を脚色した橋本忍にしても、事実とは多少異なり創作部分は多々あるものの、神也文吉大尉の「天は我々を見放した!」というセリフは史実に近いそうです。
生存者の証言では、神也大尉は「天は我々を見捨てたらしい!」と雪山の中で絶叫したそうです。
荒れ狂う大自然の中、寒さと絶望の果てに多くの兵士が脱落し、それまで神也大尉に従ってきた部下たちも、リーダーのこの一言で生きる意欲を失ってしまったそうです。

大自然の中では取るに足りないチッポケな人間だが、組織のリーダーとして、その決断、行動力、責任感がいかに大切であるかを痛感させられる作品です。
posted by ツルカメ at 22:35| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月03日

枝に霜降れど いや常葉の木

72-54.jpg
昨日12月2日は二十四節気の小雪の末候、七十二候では橘始黄(たちばなはじめてきばむ)。
橘の葉が黄葉し始める時候です。

■橘は 実さへ花さへ その葉さへ 枝に霜降れど いや常葉の木 ー聖武天皇 巻六 1009ー
ミカン科ミカン属の常緑小高木で柑橘類の一種である橘(タチバナ)。学名はCitrus(シトラス)。
みかんの様な実ですが、かなり酸っぱくて食べられないようです。
また実や花も美しいですが、常緑の葉は「永遠」を意味し、とても喜ばれたそうです。

「橘は 実さへ花さへ その葉さへ 枝に霜降れど いや常葉の木」
タチバナは実も花も葉もりっぱであるが、その上、冬になって枝に霜が降りるようになってもますます栄える木である。
聖武天皇が、葛城王(かつらぎおう)が臣籍に下り、橘姓を賜った際に、橘家がいつまでも栄えることを願って詠まれた歌だそうです。
また古事記にちなんで、京都御所紫宸殿に植えられている「右近の橘」も有名です。

「香り立つ花」→「タチバナ」と言われるように、古来から和歌にも「「橘の花は昔を思い起こす」という主題で多く詠まれています。
花の咲く時期は5〜6月頃ですが、その香りをかげば、昔の愛しい人の香りがするかも知れません・・・。
posted by ツルカメ at 22:35| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月27日

老画家ベアマンが描いた「最後の一葉」は希望か絶望か?

72-53.jpg
今日11月27日は二十四節気の小雪の次候、七十二候では朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)。
冬に吹く北西方向からの冷たい季節風(北風)が街路樹などの木の葉を払いのける時候です。

■オー・ヘンリーの名作「最後の一葉」。
北風が吹いて、木の葉が散ってゆくこの季節。想い出すのがオー・ヘンリーの短編小説「最後の一葉」。私らの年代では、学校の教科書に掲載されておりました名作ですネ!

ワシントン・スクエアの古びた安アパートに暮らす、女流画家のジョンジーとスー。ある日ジョンジーが肺炎を患い、窓から見える煉瓦の壁を這う枯れた1枚の蔦の葉が散ったら「私も死ぬ!」とスーに言い出した。
それを聞いたスーは、階下の飲んだくれの老画家ベアマンにそのことを話すが、老画家は「馬鹿げた話だ!」と罵るばかり。
それから何日か激しい雨風の日が続いたが、最後の一枚になった蔦の葉は散ることがなかった。
そしてジョンジーもいつしか、散ることのない葉に勇気をもらい元気になったが、実は壁に残った最後の一葉は、嵐の夜にベアマンが描いた絵であることを知る。そしてベアマンが肺炎を患い死んでしまったことも・・・・・・。

この話は、死ぬ間際にやっと傑作を描くことができた、ある老画家の生き様かも知れない・・・・。
また老画家ベアマンの崇高な自己犠牲の話かも知れない・・・・。

2年くらい前の新聞の書評に、この「最後の一葉」について書かれていた記事がありました。
執筆者は「ベアマンがジョンジーに残したのは希望か絶望か?」という内容だったと思います。

たしかにジョンジーはベアマンの描いた絵によって「生きる希望」を得ることができたが、自分の愚かな考えで、老画家を殺してしまった彼女には、深い絶望が残っただけではないかと・・・・・・・・・・。
posted by ツルカメ at 21:44| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月22日

ニュートンによってゆがめられた虹の色数。

72-52-A.jpg
今日11月22日は二十四節気の小雪の初候、七十二候では虹蔵不見(にじかくれてみえず)。
陽の光がよわまり、だんだん虹を見なくなる時候です。

■虹は6色、それとも7色?
「虹」と言えば、日本では一般的に7色になっていますが、アメリカでは6色。
実はアメリカも昔は7色だったそうです。それではなぜ7色から6色になったのか・・・・・

■犯人は「万有引力の法則」で有名なニュートン!
そもそも透明な光にも色があることを発見したのは、「万有引力の法則」で有名なニュートンです。
彼はプリズムで光を分光することにより、透明な光に色があることを発見。しかしニュートン自身が見えた光の数は6色しかなかったそうだ。でも人によって7色に見えるという人もいたので、1週間は7日間であり、音階もドレミファソラシの7音階だから、人によっては判別しにくい「藍色」と「橙色」は半音階に相当するという訳の分からない理由をこじつけて7色にしてしまったそうです。

でもアメリカ人の大半は虹は6色にしか見えなかったのでしょう。
1940年代までの小中学校の教科書には「虹は7色」と記載されていましたが、その後は実際の授業でプリズムを使用し、生徒一人一人に何色に見えるか実験させたそうです。そして強要ではなく、理解させることにより「虹の色は6色」であると認識させたそうです。

■愛の戦士レインボーマンはどうなる??
う〜〜ん、そんなことを言ったら「愛の戦士レインボーマン」はどうなってしまうのだ!
ダイバ・ダッタの元で苦しい修行をし、やっと伝授することができた「七色の戦士レインボーマン」の7種類の姿に変化できる奥義は、7人から6人に減ってしまうではないか!?
これでは悪の秘密結社「死ね死ね団」の思うつぼだ〜〜! ってそんなことはどうでもイイのですが。

72-52-2.jpg
posted by ツルカメ at 22:31| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月17日

水面に映る我が身に恋したナルキッソス・・・・・。

72-51.jpg
■金の杯、銀の台
今日11月17日は二十四節気の立冬の末候 、七十二候では金盞香(きんせんかさく)。
ここで言う金盞香はキク科のキンセンカではなく、水仙(スイセン)のことをいいます。
昔の中国では水仙の花の黄色い部分を金杯、白い部分を銀台にたとえ金盞銀台(きんせんぎんだい)と呼んでいたそうです。

■水辺の仙人
ちなみに「スイセン」という名は、中国での呼び名「水仙」を音読みにしたものだそうです。
「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」という中国の古典に由来するもので、水辺で咲く姿を仙人にたとえたもので、 別名「雪中花」とも。

■自分自身に恋したナルキッソス
「水仙(スイセン)」の学名【Narcissus 】はギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソス(ナルシス)に由来するそうです。その美貌ゆえ、多くの女性から言い寄られたものの、高慢な態度ではねつけたため、復讐の女神ネメシスにより、水鏡に映った自分自身に恋をしてしまいます。しかし水面の中の美しい人は、決してナルキッソスの想いに応えてくれはしません。やがて彼は憔悴のあまり死んでしまいます。
そしてその魂が、水辺の近くでうつむきがちに咲く水仙に変わったという言い伝えが生まれました。

今も水面に映る、自分の美しい姿を覗き込むかのように咲く水仙。ナルキッソスは永遠に応えてはくれぬ自分の姿に「愛の言葉」を語りかけているのでしょう・・・・・・。

「水仙や誠は水の花なるに」  ー加賀千代女(かがのちよじょ)ー
posted by ツルカメ at 22:35| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月12日

鼻水をすすりながら57回目の誕生日ケーキを・・・・・・。

72-51.jpg
今日11月12日は二十四節気の立冬の次候 、七十二候では地始凍(ちはじめてこおる)。
本格的な冬の到来で、大地が凍り始める季節です。
七十二候どおり、今日は全国的に気温が上がらず、北海道と東北は日本海側を中心に雪が降り、 朝は福島市でも雪が降り、東北6県の気象台全てで昨年より早い初雪を観測したことに なりました。
東京の最高気温は12度5分。思い返せば、ちょうど1か月前。10月12日の、東京の最高気温は31度3分。統計開始以来、最も遅い真夏日だったのが、わずか1ヵ月で真冬の寒さに・・・・・。

72-51-2.jpg
おかげで気温の変化についていけずに、昨日から鼻水がズルズルです。
今日は57回目の誕生日ですが、鼻水をすすりながら誕生日ケーキを食べるハメに・・・・・(グシュ!)。

posted by ツルカメ at 22:36| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月07日

私の名前ですか? つばき・・・・・・・椿三十朗!

72-50-2.jpg
今日11月7日は二十四節気の立冬の初候、七十二候では山茶始開(つばきはじめてひらく)。
ツバキの花が咲き始める時候です。
ちなみにツバキ科の花には大きく分けて「椿(ツバキ)」と「山茶花(サザンカ)」の種があリ、冬の最初に花が咲き出すのは「山茶花(サザンカ)」だそうです。

72-50-1.jpg
■殺陣の鬼「三船」の度肝を抜く「左逆手切り」
「椿」といったらヤッパ三船敏郎の「椿三十朗」。 冒頭、助けてもらった女人から名前を聞かれると、「私の名前ですか? つばき・・・・・・・椿三十朗! もうそろそろ四十朗ですが・・・」と空を見上げながら、うすら恍けた返答をする三船。そして見上げた先には「真っ赤」に咲きほころぶ椿の花が・・・。
黒澤の心にくい演出です。
ちなみにモノクロ映画の中で、いかに椿の花を「赤く」みせるかを研究し、赤い椿の花を黒く塗ったそうです。

三船敏郎主演「用心棒」の興行的成功から続編として作られた「椿三十朗」。
「用心棒」よりもさらにリアル志向になった血飛沫ドパ〜〜の殺陣シーンも本作の見所! 
ラストの「仲代達矢」扮する室戸半兵衛との一騎討ちは必見です。 上段から切り掛かる半兵衛に対し、腰に差した刀の反りを左手で返し、一気に左逆手切りで胴を払う三十朗!
殺陣の「鬼」といわれた三船敏郎ならではの神業です。
織田裕二の「椿三十朗」も悪くはないが、やっぱ黒澤、三船の「椿三十朗」は最高です。
posted by ツルカメ at 22:19| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月02日

姿は花だが、心は鬼・・・・・・・。

72-50.jpg
今日11月2日は二十四節気の霜降の末候、七十二候では楓蔦黄(もみじつたきばむ)。
もみじや蔦が黄色く色づき始める時候です。
ちなみに楓(かえで)など赤くなるものが「紅葉」。銀杏(いちょう)など黄色くなるものが「黄葉」。
そして「紅葉」、「黄葉」ともに「もみじ」と呼ぶそうです・・・・・・(う〜ん ややこしや!)

72-50-1.jpg
浮世絵 歌川国芳 ー平維茂と悪鬼ー『本朝武者鏡』
■この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉 ー三橋鷹女ー
激しい表現と前衛性、そして幽玄の美に突出した俳人 三橋鷹女(みつはし たかじょ)の代表的な句です。
「紅葉の美しさに魅せられて、もしこの樹に登ったら、私は間違いなくあの鬼女となるに違いない。そんな夕日に照り映える紅葉よ」
平維茂(たいら の これもち)の鬼退治を描いた、能の「紅葉狩(もみじがり)」を題材に詠んだ鷹女の句と言われています。

■姿は花だが、心は鬼・・・・・・・。
その昔、第六天の魔王に祈願した結果、この世に生を受けた「紅葉」という美貌の女人がいた。貴族の正妻のもとに奉公するが、やがてその地位を手に入れるため正妻を暗殺しようとするが陰謀が発覚。比叡山の僧に「姿は花だが心は鬼と」告げられ、戸隠山中に幽閉されてしまう。
やがて「紅葉」は生まれつきの鬼の本性が現れ、山賊たちと徒党を組んで村の住民を喰らう食人集団となりはてる。
そして「紅葉」と山賊達を討伐する命を帯びて、平維茂が鬼と化した「紅葉」と対決し、討ち取るに至った、と伝えられています。
これが鬼女紅葉伝説 『北向山霊験記・戸隠山鬼女紅葉退治之伝』として伝えられているお話です。
今でも長野県長野市鬼無里では「鬼女もみじ祭り」が催されています。
posted by ツルカメ at 21:40| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月28日

女心と秋の空・・・・・・・。

72-49.jpg
今日10月28日は二十四節気の霜降の次候、七十二候では霎時施(こさめときどきふる)。
霎(しょう)とは、晩秋から初冬にかけて、「しとしと」と降ったり止んだりする雨「時雨(しぐれ)」のことです。 晴れていたかと思うとサアーッと雨が降り出し、急いで傘をさすと、また青空が戻ってくる、まさに〈女心と秋の空〉とはよく言ったものです。

■もともとは「男心と秋の空」
室町時代の狂言『墨塗すみぬり』に「男心と秋の空は一夜にして七度変わる」という有名なセリフがあります。
狂言「墨塗」とは、都に滞在していた田舎大名が、帰郷することとなり、在京中になじんだ女のもとへ、別れを告げに行きます。女は悲しげに泣くが,実は不誠実な男に対して、水で目をぬらして涙と見せかけていたのです。
それに気づいた太郎冠者が水を墨に取りかえておくと、それと知らぬ女がなおも墨を目の下に塗り顔中墨だらけになるというお話でございます。

「男心」も「女心」も、秋の空と同じく移り気だということでしょう・・・・・・・。

posted by ツルカメ at 22:29| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月23日

霜降れば霜を盾とす法の城

72-48.jpg
今日10月23日は二十四節気の霜降の初候、七十二候では霜始降(しもはじめてふる)。
晩秋を迎え、朝晩の気温が下がり、霜が降り始める時候です。
霜が降りると書いて「霜降(そうこう)」と読みますが、実際に霜が空から降りてくるわけではありません。 霜は空気中の水蒸気が、水になることなく、水蒸気からいきなり氷の結晶に昇華して出来る現象だそうです。 そして霜の降りる条件として重要なのは、「風が弱いこと」と「気温が4℃以下であること」だとか・・・・・・。

■「霜降れば霜を盾とす法の城」   ー高浜虚子ー
しもふれば しもをたてとす、のりの城

正岡子規の死後、子規の弟子であった碧梧桐と激しく対立した高浜虚子が詠んだ「霜降れば」の句。碧梧桐の「新傾向俳句」に対して、「守旧派」を宣言した虚子は俳句は伝統的な五七五調で詠まれるべきであると唱え、また季語を重んじ平明で余韻があるべきだとし、客観写生を旨とすることを主張。 そしてその時の決意を表した句がこの「霜降れば」の句です。

霜が降れば、霜のような儚く、心もとないものでも、厳しく仏法(伝統俳句)を守らねばならない。
虚子の凛とした気構えが、心を揺さぶる句です。
posted by ツルカメ at 22:38| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月18日

アリの様に生きるか、キリギリスのように死ぬか!?

72-47.jpg
今日10月18日は二十四節気の寒露の末候、七十二候では蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)。
キリギリスが家の戸の辺りで鳴きだす時候です。
キリギリスの古名は「機織り虫(ハタオリムシ)」。 その鳴き声が機織りの音に似ていることから名付けられたのでしょう。 キリギリスより趣きがあっていい名前です。

■イソップ寓話の「アリとキリギリス」
キリギリスで思い出すのは、イソップ寓話の「アリとキリギリス」。 子どもの頃、読んだり聞かされたりした有名なお話ですネ。 働き者のアリと歌ってばかりいたキリギリスのお話。 イソップ寓話の多くは擬人化された昆虫や動物たちが繰り広げる教訓めいたお話。
子どもの頃「アリとキリギリス」のお話は『将来の備えを怠ると、困ったことになる』という教訓だと思っていましたが、歳をとり純粋な気持ちが薄らいでくると、また違った見方になってきます。

人生の楽しみを謳歌せず、ただ働き続けるアリ達。 限られた人生を楽しく生きようとするキリギリス。 所詮いつかは死んでしまうなら、人生楽しく生きようとするキリギリスの生き様もある意味正解ではないでしょうか・・・・・! 

時代や国によって物語の結末は様々あり、中には働き過ぎたアリ達も過労死で死んでしまうというブラックジョーク的な結末も!

日本には、1593年(文禄2年)にイエズス会の宣教師が伝えたとされるイソップ寓話。
「アリとキリギリス」の教訓も、お釈迦様ならば何事も「中道」が肝心と説いたかも!!
posted by ツルカメ at 17:52| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月13日

苗字の由来

72-46-1.jpg

72-46-2.jpg
庭の菊も満開です。
今日10月13日は二十四節気の寒露の次候、七十二候では菊花開(きくのはなひらく)。
菊の花が咲き始める時候です。
庭の菊の花も咲きそろいました。
「菊」といったら「桜」とならび日本の国花。そして後鳥羽上皇が菊の花を好まれ、身の回りのものに施したことにより天皇および皇室の紋にもなっている、まさに日本を象徴する花です。

■苗字の由来
ちなみに私の苗字は「菊池」ですが、「菊」は花の菊とは関係ないそうです。そこでちょっと調べてみたら、「菊」は「岫(くき)」のことで、山のほら穴や山の峰を意味し、「池」は池、地を表すと考えられているとか。
また現在の熊本県である肥後国菊池郡が起源(ルーツ)であり、中臣鎌足が天智天皇より賜ったことに始まる藤原氏の流れをくんでいるそうです。
「地」を用いる「菊地」は「菊池」の分家で東日本に多く、本家の「菊池家」は戦国時代に大友宗麟によって滅ぼされてしまったそうですが・・・・・・・・・。
posted by ツルカメ at 15:59| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月08日

沈魚落雁(ちんぎょ らくがん)

72-45-1.jpg
今日10月8日は二十四節気の寒露の初候、七十二候では鴻雁来(こうがんきたる)。
東北の山々が赤く染まり、雁が飛来して来る時候です。
雁(がん/かり)はカモ科の水鳥の総称で、カモより大きく、ハクチョウより小さいものを雁と呼ぶそうです。

■津軽地方に伝わる物悲しい「雁風呂」伝説
秋に飛来する雁は、木片を口にくわえたり、足でつかんで運んでくると信じられていました。渡りの途中、水面に木片を浮かべ、その上で休息するためだそうです。日本の海岸まで来ると、不要となった木片はそこで一旦落とします。そして春になると、再び落としておいた木片をくわえて海を渡って帰っていくのだと考えられていました。そして旅立ちの季節が終わっても海岸にまだ残っている木片があると、それは日本で死んだ雁のものであるとして、供養のため旅人などにその木片で焚いた風呂を振る舞ったという、ちょっと物悲しいお話です。
実際には雁がそのような行動をとることはないそうですが・・・・・・。

72-45-2.jpg
伊藤若冲「芦雁図(ろがんず)」
72-45-3.jpg
歌川広重「月に雁」
■伊藤若冲「芦雁図(ろがんず)」と歌川広重「月に雁」
「奇想の画家」と称された伊藤若冲の「芦雁図」と、日本を代表する浮世絵師 歌川広重の「月に雁」。
どちらの絵も上空から真っ逆さまに下りてくる雁が、ダイナミックな構図として描かれています。
雁の一瞬の描写をとらえたすばらしい絵ですが、実際にはこのような飛び方はしないそうです。コアジサシやカツオドリが魚を捕らえるために水面に向かってダイヴしますが、雁は水面に着水するときは、飛行機のように後から降り立つのが普通だとか。
しかしこの緊張感あふれた二枚の雁の絵は、若冲、広重ともに、その桁外れの写実能力と想像能力が生み出した傑作に違いありません。

■沈魚落雁閉月羞花(ちんぎょらくがんへいげつしゅうか )
中国の古い故事で、もともとは『荘子(そうじ)』斉物論(せいぶつろん)にある逸話です。
〈あまりの美しさに、魚は沈み隠れ、雁は列を乱して落ち、月は雲間に隠れてしまい、花も恥らってしぼんでしまう〉という意味ですが、それはあくまでも人間を基準とした考えであって、魚や雁が美人を見ても、ただ怖がって逃げるだけという荘子(そうし)の相対性を表した言葉です。
そう言われると身も蓋もありませんネ。
若冲、広重の絵も、美人に目が眩んで落ちてくる雁の姿と想像すると、粋で趣きがあります。
posted by ツルカメ at 17:07| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月03日

世の中は稲刈るころか草の庵

72-44-1.jpg
今日10月3日は二十四節気の秋分の末候、七十二候では水始涸(みずはじめてかるる)。
田畑の水を干し始め、収穫の秋にむけて稲刈りが行われる時候です。

72-44-B.jpg
与謝蕪村〈芭蕉像〉
■世の中は稲刈るころか草の庵 ー芭蕉ー
俳聖 松尾芭蕉が秋の稲刈りを題材に詠んだ句です。 芭蕉40歳の頃の隠遁生活を送っていた時代の句だそうです。
前詞があり、「人に米もらうて 世の中は稲刈るころか草の庵」。
「人から新米を貰って、ああ、世間はもう稲刈りの時期なのだなあと初めて気づく。自分は世捨て人のように風雅三昧にふけりながら、気ままな草庵生活を送っている」。

芭蕉40代の浮き世離れした隠遁生活、50代半ばの私にはウラヤマシ〜生活ですね。

■旅に病んで夢は枯野をかけ廻(めぐ)る ー芭蕉ー
死の4日前に詠んだ芭蕉最後の句。「旅先で死の床に伏しながら、私はなおも夢の中で見知らぬ枯野を駆け回っている」。 死に際まで制作の意欲を失わない芭蕉の俳人魂に感動です。
posted by ツルカメ at 21:43| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月28日

幸せを運ぶ「聖母マリアのお使い」

72-43.jpg
今日9月28日は二十四節気の秋分の次候、七十二候では蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)。
春から夏にかけて、外で活動していた巣籠もり虫たちが、再び土の中に潜って穴をふさぐ時候です。

■秋から冬に巣篭もる昆虫たち
人間のようにコートを着たり、ストーブにあたって体温を調節したりできない昆虫たちは、寒くなると体の動きも鈍くなってしまいます。そのため成虫で冬を越す昆虫 たちは、気温の変化が少ない土の中や落ち葉の中でじっとしています。
成虫で冬越しする昆虫たちは、チョウやテントウムシ、オサムシ、カメムシ、ハチなど数多くみられます。

■天道虫・紅娘・瓢虫
太陽へ向かって飛んでゆくことから名付けられた天道虫(テントウムシ)。 何種類か混じって落ち葉の下などに身を寄せ合って 寒い冬を越します。
テントウムシ、漢字で書くと「天道虫・紅娘・瓢虫」。
「紅娘」は、赤い色から付けられた名前のようですが、英語ではladybird(ladybug)と呼ばれ、ladyは聖母マリア様を示すとされ、イギリスでは『聖母マリアのお使い』と呼ばれています。
またヨーロッパでは“テントウムシが身体にとまると幸せがやって来る”という言い伝えがあるそうで、その可愛らしい姿が世界中で縁起の良い虫として好まれているようです。

羽出すと思へば飛びぬ天道虫  ー虚子ー

夏の盛りには庭などでよく見かけたテントウムシも、来年の春まではお別れです。
posted by ツルカメ at 21:31| Comment(0) | 七十二候 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする