2014年04月24日

人間は災いなり・・・・・

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第11回「このミス」で大賞を受賞した安生正(あんじょうただし)の「生存者ゼロ」を読む。
前半はスピード感もあり話の内容も面白く、グッと読者を引きつけてくれる! 作者もきっと書きたいことが山ほどあって、筆を押さえるのに苦労したのかもしれない。カバーイラストでもわかるように自衛隊フリークにはたまらない話であり、パンデミックものや宗教、科学好きな人にも楽しめる本でしょう。
デビュー作でこれだけ書けるのは確かに凄いことだと思いますが、ちょっとアレもコレも盛り込み過ぎた感はありますが・・・・。 また、結末がなんだか良くわからなく、中途半端なのが残念。前半ノリすぎて、後半ページ数がなくなっちゃたのかも!(もしかして続編を執筆中とか・・・・)
タイトルも原題は「下弦の刻印」だったそうです。変更したのは作者の意図か編集者の意図かは知れないが、カバーイラストもタイトルもちょっとイタいですね。

作者は「下弦の刻印」というタイトルで何を書きたかったのだろう・・・・。
本文中では「新月」が話のキーポイントとなっております。新月は満月とはまったく逆のエネルギーを人体に与え、体中のエネルギーを外に放出してしまうそうです。
そして満月から新月へむかって欠けていく途中の半月を「下弦」と呼びます。この時期には精神的に不安定になり易い状態で、問題が解決できなくてストレスを感じる時期だとか・・・・。等々いろいろと「下弦の刻印」について考えてみたが、わたしの頭ではわかりません。

また主人公の一人である感染症学者の話の中に「パウロ内堀作衛門の黙示録」がちょくちょくと出てきますが、これも何を言いたいのかちょっとわかりません。

ただキリストの使徒であり、新約聖書偽典の1つである「パウロの黙示録」の冒頭には、
人間は災いなり、
罪人は災いなり、
なぜ、彼等は生まれたのか。 

という言葉が書かれております。
確かに、全ての張本人は人間なのだから。

まア、いろいろと読んだ後も考えさせられる面白い本ではありました。

ただこの手のジャンルでしたら、やはり西村寿行さんの「滅びの笛」「滅びの宴」そして「蒼茫の大地 滅ぶ」にはかないませんネ!



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2014年02月25日

「古事記」の面白さを教えてくれた漫画

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「ウルトラジャンプ」3月号に、奇才 諸星大二郎の「妖怪ハンター」の復刻版が特別付録としてついていたので、おもわず買ってしまいました!
日本考古学会から追放された異端の考古学者「稗田礼二郎(ひえだれいじろう)」がゴースト・ハンターとして怪事件に挑むお話ですが、古事記や聖書、民俗学、神話等のお話を、諸星流の古史古伝に作り上げたストーリー展開は今読んで大変おもしろく、伝奇物の先駆者といっても過言はないでしょう。
これを読んで私も「古事記」の面白さを知りました。

「妖怪ハンター」を読んだら、日本映画界の奇才 塚本晋也がメガホンをとり映画化した「ヒルコ 妖怪ハンター」を観たくなっちゃいました。主人公の考古学者「稗田」役を沢田研二が演じているのですが、これがなかなかイイ味を出しているのです。ラストはおもわずホロリと涙が出てしまう、こちらも原作に引けを取らないイイ映画です!!
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2014年02月10日

少年と雪だるまの心温まるストーリー。

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真っ赤な目玉の愛くるしい雪だるま。

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かまくらに入っている小ちゃな雪だるま。

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ちょっとくたびれた雪だるま。

雪だるまといったら「スノーマン」!
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先日の大雪で、家の近所のアチコチにたくさんの「雪だるま」が出現! 大半の雪だるまが溶けて崩れてしまいましたが、日陰にはまだ原型をとどめている「雪だるま」も残っています。

「雪だるま」といったらレイモンド・ブリッグズ原作の絵本、「スノーマン」を思い出します。
名もない少年がクリスマスに雪だるまをつくりました。夜の十二時になった時、その雪だるまに命が宿ります。
そして少年と雪だるまの心温まる物語が幕を開けます・・・・・・。
絵だけの描写で文字はありませんが、それがかえって無限の想像性を読む人の心に語りかけてくれます。
子供が読んでも大人が読んでも楽しめる、心がホットする絵本です。

ちなみに日本において「雪だるま」がいつ頃作られるようになったかは、定かでないようです。
ただ歌川広重の浮世絵『江戸名所道戯尽 廿二御蔵前の雪』を見ると江戸時代の「雪だるま」はまさしく「雪達磨」でございます!

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歌川広重『江戸名所道戯尽 廿二御蔵前の雪』
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2014年01月27日

愛すればこその想いが、生む悲劇。

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伝奇ホラー小説で直木賞作家の坂東眞砂子さんが本日27日に急逝。
坂東眞砂子といえば四国出身で、その四国を舞台にした「死国」「狗神」のヒットで一躍有名に。そして日本の土俗信仰などをテーマにした著書でジャパニーズ・ホラー小説界をリードしていた方だけに、この悲報は残念でなりません。

「死者が甦る」禁断の“逆打ち”
私が初めて読んだ坂東さんの本がこの「死国」。
わが子の死を悲しがる母が、四国八十八ケ所の霊場を死者の歳の数だけ逆に巡ると、死者が甦えるという“禁断の逆打ち”を行なう。
そこは「生者」と「死者」が織りなす情念の世界・・・・・。
愛すればこその想いが、生む悲劇。
そして“四国”が“死国”になる。

日本の俗信仰を巧みにとり入れたストーリ展開は坂東眞砂子ならではの世界でしたが、もう読むことができないのは残念でなりません。

坂東眞砂子さんのご冥福を祈りつつ・・・・。

ちなみに、この「死国」のブックカバーを飾る絵は、私の大好きな現代の絵師ともいえる智内兄助(ちないきょうすけ)氏の<雛の眼のいづこをみつつ流さるる>というタイトルの絵です。
坂東眞砂子さんの描く「死国」の情念の世界を、見事にイメージさせる絵です。
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2014年01月21日

月夜に浮かぶ巨大な墓碑

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昨日の月は大きく赤い不気味な月でした。
そんな赤い月を見ていたら、吉村昭の「プリズンの満月」の中の一説を想いだしました。

驚くほどに赤い満月が、庁舎の上に昇っている。血のついた鶏卵の黄身のように朱の色をおび、月面の陰翳 も浮き出ている。
月光は、獄房の中にも差し込んでいるにちがいない。
戦犯として死刑を確定された者たちは、その月を眼にしながら何を考えているのだろう。
過ぎ去った日々のこと、家の残した家族のこと、そしていつやってくるか知れない自分の死のことを思っているにちがいない。


本書「プリズンの満月」は戦争犯罪人を収容した巣鴨プリズン(巣鴨拘置所)に刑務官として勤務したある人物の物語です。

巣鴨プリズンを経て小菅刑務所での刑務官としての仕事も定年退職を迎え、やっと悠々自適の生活を送ろうとする主人公「鶴岡」のもとに昔の上司から仕事の依頼があります。それは巣鴨プリズンの跡地に建設される超高層ビル「サンシャイン60」の警備責任者という職。
昔の上司からの依頼を断りきれず、仕事を引き受けた鶴岡だが、その場所は、元巣鴨プリズンという忌まわしい場所。鶴岡の脳裏に消し去ろうとした過去の出来事がよみがえっていきます。

戦争犯罪人を描いた「極東国際軍事裁判」の映画や小説等は数多くありますが、同じ国民同士が戦犯の刑を執行するという史上類のない異様な世界を、一人の刑務官をとおして語る、吉村昭ならではの綿密な取材から生まれた傑作小説です。

中学、高校時代と「巣鴨」のお隣の「大塚」で過ごした私ですが、何度か巣鴨プリズンの跡地を見に行ったことがあります。
そしてサンシャイン60の裏にある東池袋公園には、極東国際軍事裁判で刑を受けた戦犯者たちを悼む石碑がひっそりと建てられていまが、赤い満月に照らされて建つ巨大なサンシャイン60こそが、戦犯者たちのエピタフを刻んだ巨大な墓碑のように思われてなりません・・・・・。
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2013年12月14日

帝国陸軍最後の切り札「富号作戦」!

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自宅前の国道246号線から撮影した富士。

今日も朝からカラッと澄み渡った青空。昨日の強風で雲もなく、富士山がよく見えました。
■人質は「日本国民」!
富士山といえば1995年発行の藤山健二著「富士山の身代金」。
太平洋戦争末期、帝国陸軍はアメリカとの最終本土決戦に備え「富号作戦」なるものを考案。それは富士山地下に洞窟を掘り50トンの爆薬を仕掛け、米軍が来襲した際、富士山の溶岩を本土に流出させ、敵と討ち死にするというトンデモない作戦。

そして物語は現代へ・・・・。富士山の地下深くにそのまま放置されていた50トンにおよぶ爆弾がテロリストの手の落ちてしまう。テロリストは富士山測候所を占拠し、富士山の噴火と首都潰滅を宣言!
事態を甘く見ていた政府の見通しは、ことごとく打ち破られ、テロリストは 「日本国民」を人質にとり多額の身代金を国に要求するという緊迫の展開に・・・・。
そこに登場するのが元陸上自衛隊のレインジャー部隊一尉で、今は防衛庁長官に直接雇われているスーパーヒーロの傭兵! そして「徐福伝説」で有名な徐福の末裔であるサイキック美少女姉妹・・・・!?

お話はトンデモ本のようなストーリー展開だが、そこそこ楽しめる本です。
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2013年09月16日

吉村昭 「焔髪えんぱつ」

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吉村昭の短編集「脱出」。太平洋戦争末期から敗戦後の混沌とした日本を舞台に、戦争という荒波にもまれながら辺境ともいうべき地で必死に生きる人々を描いた短編5作を収録。
その中の1編である「焔髪」は奈良・東大寺の仏像疎開作業に従事する僧と囚人たちの物語。
タイトルの「焔髪えんぱつ」とは、明王などの憤怒の形相の仏像に見られるもので、髪が逆立ち、炎のような髪の形のこと。

戦中、戦後を通して行なわれた東大寺・法華堂(三月堂)の仏像疎開作業。
たとえ戦火にあって焼滅しようとも、仏様を移動することはできないと反対する者、そして国宝を守るため文部省の指令に従うべきだと主張する者達で、紛糾する東大寺塔頭会議。何ヶ月もの議論の末、やっと主要仏像の疎開が決まるが、時代は終戦を向かえる。そして戦火での焼失はまぬがれたものの、今度は戦争賠償のため、美術的価値の高い仏像がアメリカへ賠償物として引き渡されるという説が流布。時代に翻弄されながら、国宝を守るため真摯に疎開作業に従事する僧。そして運搬作業の人足として動員され、機械のように黙々と働く囚人達。
戦後の混乱の中、彼らは何を考え疎開作業に従事したのか・・・。
そして敗戦後、囚人達の手により疎開先から三月堂にもどってきた仏像達。
その梱包の布をひらいてゆくと中からは【腰から下が破損した、朱色の焔髪を逆立てた憤怒の形相の仁王像】が現れる。
この仁王像の怒りは、敗戦後の日本へ進駐してきたアメリカ兵への怒りか、それとも愚かな戦争へ突き進んだ日本人への怒りなのか・・・・。

吉村昭ならではの傑作短編集です。
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2013年08月31日

関東大震災から90年・・・・・

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浅草「凌雲閣」の崩壊図
明日9月1日は防災の日。90年前の明日、1923年(大正12年)9月1日 11時58分32秒。
神奈川県相模湾北西沖80kmを震源としたマグニチュード7.9の地震が、神奈川県を中心に千葉県・茨城県から静岡県東部までの広範囲を襲いました。

吉村昭氏の「関東大震災」は、その未曽有の天災を克明に描き「菊地寛賞」を受賞した渾身の一作。
多くの犠牲者を出したこの震災は「天災」なのか、それとも「人災」なのか。甚大なる犠牲者を出した「被服廠跡」の火災の描写はまさに胸を突く凄惨な話です。
吉村昭氏のこの「関東大震災」と「三陸海岸大津波」は、我々が後世 震災記録文学として語り継がなければならない貴重な歴史資料なのです。

天災は忘れた頃にやって来る! 備えあれば憂いなし!
と言う事で、今日は川崎市総合防災訓練の見学へ行ってまいりました。川崎市の等々力緑地催し物広場のメイン会場には川崎DMATと連携した、神奈川県警、神奈川消防所、陸上自衛隊等 57 機関約 500 名が大集結!
炎天下の中、実践さながらの緊迫した総合防災訓練でした。

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神奈川消防の双腕重機「ASSTACO」

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川崎消防航空隊 救助ヘリ「そよかぜ」

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陸上自衛隊の勇姿

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川崎中原消防団による一斉放水!
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2013年08月27日

68年前の日本の空を一機のロケット戦闘機が飛んだ!

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今日は多くの方が、イプシロンの打ち上げを、待ち望んでいたことでしょう。私もTVのライブ映像で、ワクワクしながら一緒にカウントダウンし「3、2、1、0・・・・・・・ヘッ!?」てな感じでございましたが、機体には異常もなく、数日後には打ち上げ可能とのことで、ホッといたしました。

さて、今日ご紹介する本は「双葉社」から出ている「日本軍 試作機 計画機」という大型本でございます。
太平洋戦争末期、日本の航空技術の粋を集めて製作されようとした試作機、計画機をフルカラーCGで再現した豪華本です。
そしてその中に、三菱が製作した「試作局地戦闘機 秋水(しゅうすい)」という日本初のロケット戦闘機が紹介されています。
同盟国であったドイツからU-ボートで極秘裏に運ばれたメッサーシュミットMe163Bの技術資料。それはドイツが開発した世界初の実用ロケット戦闘機の資料でした。戦争末期、資材も何も無い時代に短期間で、日本の技術者達は奇跡ともいうべき国産ロケット戦闘機を完成させます。
昭和20年7月7日、テストパイロット犬塚豊彦大尉を乗せ、ロケットエンジンの轟音を響かせながら「秋水」は大空へ飛び立ちます。しかしながら高度約500M地点でエンジンが停止、そのまま滑走路手前の川に不時着してしまいます。残念ながら犬塚大尉は殉職。そして二号機による試験飛行の準備中に終戦をむかえます。

ギリシャ神話に登場するイカロスの翼を作ったダイダロスのように、人は大空を飛ぶという「見果てぬ夢」を追う者。次回の「イプシロン」打ち上げに夢を託しましょう。


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2013年08月25日

渡辺綱(わたなべのつな)が名刀、鬼切(おにきり)。

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浮世絵師 揚州周延(ようしゅうちかのぶ)が描く渡辺綱の戻橋鬼女退治。
刀は名刀「 関の孫六 兼元」 模造刀ですが・・・・。
ちょっと不謹慎な話かもしれませんが、武器や兵器を「美しい」と感じる人がいると思います。かくゆう私も大好きですが・・・・・。
とくに日本刀の美しさは格別! 人を切るための武器ではあるが、権威の象徴を意味する宝物でもあります。
幾度か真剣を手にさせていただいたことがありますか、曇りのない刀身を見ていると魂が吸い込まれる気がします。

本書「名刀伝説」は日本の神話伝承から能、狂言、歌舞伎、文楽、浄瑠璃、そして戦前・戦後の映像作品等、多岐にわたるジャンルに登場した刀剣を紹介したなかなか面白い本です。

今日ご紹介するのは名刀、鬼切。 そもそもの名前は髭丸(ひげまる)といい、渡辺綱の主人であり大江山の鬼退治で有名な源 頼光(みなもとのよりみつ)の佩刀です。その佩刀を頼光から預かっていた綱が、京都・一条戻橋で鬼女に出会い、その太い腕を一刀の下に切り落としてしまいます。
その鬼女こそが、大江山で頼光に退治された酒呑童子(しゅてんどうじ)の腹心、茨木童子(いばらきどうじ)だったのです。
ちなみに大江山で頼光が酒呑童子を退治した太刀は「大原安綱(おおはらやすつな)」。後に童子切安綱(どうじきりやすつな)の異名をもち、天下五剣の筆頭に挙げられる稀代の名刀です。
そして罪人を生きたまま試し切りに処したとき、その髭までを断ち切ったことからついた「髭丸」の名は、鬼女を切ったことから「鬼切」の異名がつきました。

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最後の浮世絵師 月岡芳年が描く羅城門渡邉綱鬼腕斬之図。
戻橋の鬼女退治を謡曲にした「羅生門」の一場面。鬼と対峙した渡辺綱の一瞬の緊張感をストップモーション的に表現した傑作です。
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2013年08月15日

仏か鬼か!? 釈迦牟尼の真の正法をめぐって二人の宗教者の闘いが始まる!

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江戸文化の話や、鬼、陰陽師等の造詣も深い野火 迅さんの「仏鬼」です。

時は戦乱の鎌倉時代。 朝廷と幕府がせめぎあう中、京の都に釈迦の末裔・五十二代仏祖を名乗る「翳覚(えいかく)」を教祖とした異形の邪教集団が現れる。そして彼らは仏の名の下に「鬼」のような所業で人々を殺していく。果たして彼らは「鬼」か「仏」か!?
そんな仏教の危機に、釈迦牟尼を慕う老僧「明恵(みょうえ)上人」が敢然と立ち向かう・・・というお話です。
なんか実際にあった明恵上人と浄土宗の法然との争いのような話ですが。

実は本の帯に書かれていた、宗教学者 中沢新一さんのコピーに惹かれて買ったのですが、物語的には伝奇・時代劇アクション風で、もっと翳覚と明恵上人との仏教問答があればよかったのですが。
しかしながら、何事にも真摯に清廉潔白に生きた「明恵上人」像はなかなかうまく描かれています。

■阿留辺幾夜宇和(あるべきやうは)
鎌倉期初頭に活躍した、華厳宗中興の祖とされる明恵上人。19歳から亡くなる60歳までの40年間、自分の夢を記載した明恵上人。
13歳の時には、肉体があるから煩悩・苦悩があるのだと考え、山犬に喰われ死のうとした明恵上人。
癩病には人肉が効くと教わり、癩病人に自分の肉を食べさせようとした明恵上人。
そして23歳の時には、修行のために右耳を剃刀で切り取ってしまった明恵上人。
釈迦牟尼の教え、精神、戒律を何より重んじた「明恵」こそが「仏鬼」なのかも知れません。

阿留辺幾夜宇和(あるべきやうは)は自分の生き方を律するための明恵上人の言葉です。
「あるべきやうは」は「あるがまま」に生きるという受け身的な考えではなく、その時、その場に合った「やるべき事は何か」を前向きに考える事が「あるべきようは」なのです。
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2013年07月13日

吉村昭「零式戦闘機」と坂井三郎「零戦の真実」

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来週末から公開される宮崎駿の新作「風立ちぬ」。模型雑誌のモデルグラフィックスに連載されていた漫画の映画化ですが、なぜ堀辰雄の名作小説「風立ちぬ」と零戦の設計者の堀越次郎が結びついたのか私には疑問ですが・・・。
そんなことより零戦の小説といったら吉村昭の「零式戦闘機」と坂井三郎の「零戦の真実」がおすすめ!

■零戦、その秘密裡の誕生から敗亡の悲運。
ベストセラー小説「戦艦武蔵」で記録小説の新境地を拓き菊池寛賞を受賞した吉村昭ならではの徹底的な取材と検証に基づいた戦記文学の傑作「零式戦闘機」。昭和十五年=紀元二六〇〇年を記念し、その末尾の「0」をとって、零式艦上戦闘機と命名され、ゼロ戦(れい戦)とも通称された精鋭機の誕生から、敗戦にいたるまでの悲運の戦闘機を描いた傑作です。

■大空のサムライ、撃墜王が描く真実の零戦と海軍の光と陰。
大日本帝国海軍のエース・パイロットであり世界的撃墜王と称された坂井三郎の「零戦の真実」。さすが実際の戦闘機乗りが描くだけあって、偽りのないリアルなお話で零戦の長所から短所から始まり、日本海軍の暗部までを克明に描いた傑作です。

この他にも柳田邦夫の「零戦燃ゆ」もおもしろいです。

さて、宮崎駿の「風立ちぬ」はヒットとなるのでしょうか? 個人的には「紅の豚」以降の宮崎作品はちょっと消化不良気味。なんか重たいモノを背負いすぎでは・・・。ナウシカで描いた「人と自然の再生」が「もののけ」以降なんか違うレベルに行ってしまったような気がします。
どうせなら「紅の豚2」を観てみたいナ! 話は単純明快!!「飛べないブタはただの豚だ」これですヨ!!

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2013年07月04日

富士山頂で繰り広げられる、企業戦士達の闘い。

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6月22日、三保松原を含め無事に世界文化遺産に登録された富士山。
ということで前回ご紹介した富士山をテーマにした新田次郎の「芙蓉の人」に続き、今回も同じく新田次郎著による「富士山頂」のご紹介。
本書は気象庁が1964年に富士山頂の富士山測候所に設置した気象レーダー建設にたずさわった男達の熱き闘いを描いた物語です。作者である新田次郎自身が気象庁測器課長として富士山レーダードーム建設を担当しただけあって、文章からはリアルな緊迫感と感動が伝わってきます。
実際にこの工事は気象条件が過酷なことや納入機器が特殊なことから、気象庁は取引先選定で競争入札は機能しないと判断し、公共工事としては異例の随意契約により設置費用2億4千万円で三菱電機と大成建設に発注。そして後に「富士山気象レーダー」にみる官製談合として「官製談合のモデルケース」としてとりあげられています。単に「山岳小説」ではなく旧・大蔵省における予算の復活折衝の様子や大手電機メーカー各社による激しい入札争い・政治家や政府高官を使った圧力争いなど、企業小説としての醍醐味も味わえる名作です。


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2013年06月05日

日本文化の象徴、富士に挑んだ気骨の女性。

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大輪の芙蓉と芙蓉峰。

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芙蓉の人、野中千代子と野中到(いたる)。

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富士剣ケ峰の野中観測所。
今月17日から開かれる世界遺産委員会で、文化遺産に登録予定の日本を象徴する富士山。この富士山に明治時代の封建社会の中、果敢に挑んだ一人の女性がいました。
彼女の名前は野中千代子。夫である気象学者の到と夫婦二人だけで、厳冬期の富士山頂で寒さと病気に闘いながら気象観測を続けた気骨の人です。
新田次郎の小説「芙蓉の人」は、その野中夫婦が厳冬の富士山頂で過ごした感動の物語です。

気象学者である到は高層気象観測の必要性を痛感し、いまだ厳冬期の富士山頂に登った者がいない時代、工夫用のツルハシと釘を打ちつけた毛布製の靴で富士の頂上に挑みます。そしてそれを追いかけるように、周囲の反対を押し切って夫のために千代子も富士山頂をめざします。
そして過酷ま厳冬期の富士山頂にて、寒さと高山病で立ち上がることもできなくなった到に代わって、観測を続ける千代子の献身的な愛。
野中至、83日。千代子、71日という富士山頂連続滞在日数の記録はいまだ敗られることなく偉業として称えられています。
その美しさから「芙蓉峰」という雅称で呼ばれる名峰「富士」。そして「芙蓉」のような美しい心ももった千代子。文化遺産となる富士山が生み出したドラマです。



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2013年05月18日

心の深層に隠れひそむ、もう一人の私・・・・・

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遠藤周作 小説の館シリーズ「ピアノ協奏曲二十一番」。
輪廻転生、幽体離脱、念力等を題材とした小説の館シリーズ「その夜のコニャック」につづき、本作は人間の深層に隠れひそむ、自分も知らないもう一人の私がテーマ。
10作の短編からなる悲しく、おもしろく、切ないもう一人の自分に出逢えます。

とくに「最後の晩餐」は遠藤氏の作品「おバカさん」に共通した、魂の救済の話です。第二次世界大戦中、ビルマにて戦友の肉を喰い、生きながらえた主人公の塚田。しかし日本へ帰ってきても戦友の顔が頭から消えず、酒をあおり医者からは余命3ヵ月と宣告される。そんな時、塚田のもとにエチエニケというクリスチャンの外人のボランティアがあらわれます。そして他人には頑な態度だった塚田もエチエニケには徐々に心を開いていきます。
そして臨終間際に塚田はエチエニケにこう問いかけます。
「あなたのいう神は・・・おるとか?」「俺は戦争中に・・・ひどかことばした」「餓鬼道に落ちた俺でもゆるしてくれるとか・・・・」
その問いにエチエニケは「塚田さん、私は大学生の時、飛行機事故でアンデス山中に十二日間、食料もなしにいました。そして私は・・・・・・」

エチエニケの口から衝撃の過去が語られるのでした・・・・。
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2013年04月29日

人間の深層心理に潜む「陰」と「闇」。

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遠藤周作晩年の「小説の館シーリズ/その夜のコニャック」。表題作である「その夜のコニャック」は戦時中、死を覚悟した防空壕の中で父と飲んだコニャクへの想いを綴ったもの。フランス語を独習していた主人公は、父と飲んだそのコニャックの味に、美食家で知られるフランスのルイ14世でも味わったことのないだろう芳醇な味と香りを覚え、それが僅かに残された自分の生命の味であろうと確信する・・・・・。
「輪廻転生」「幽体離脱」「念力」等、人の深層に潜む、切なく恐ろしい悲劇と喜劇を綴った秀作です。
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2013年04月17日

ピンク・フロイドでハイになる!

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本棚の隅にあったシンコー・ミュージック発行のニュー・ルーディーズ・クラブ「ピンク・フロイドでハイになる」。懐かしくなり、おもわず読返してしまいました。20年くらい前に発行されたものでタイトルどおり「ピンク・フロイド」の特集です。中でも山川健一氏の「ピンク・フロイドでハイになり、ぼくらの内側の世界をトリップするための全アルバム・ガイド」は今読んでもなかなか面白い内容です。
山川氏といったら、自身がオーラを見ることができる幻視者で精神世界への傾倒も深く、著書「ヒーリング・ハイ」などその手の本も多数執筆。

さて本書の内容ですが、67年発売のファーストアルバム「夜明けの口笛吹き」にはじまり、95年発売の「パルス」までの16枚のアルバム中、どの曲が「ハイ」になるかというお話ですが、私個人も山川氏が言うように、71年発売の7枚目のアルバム「Meddle/おせっかい」のB面に収録されている23分に及ぶ「エコーズ」が1番ですネ。

かつてはドラッグ・ミュージックとして聞かれていたピンク・フロイドですが、ヒーリング・ミュージックとして聞いても、「ハイ」になりさえすれば「心が癒される」ということです。

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ピンク・フロイドのアルバム中、最も「思い入れのある」アルバムとして人気の「Meddle/おせっかい」。
「狂気」にみる音の小細工も無く、「アニマルズ」や「ザ・ウォール」のような社会風刺も大袈裟なコンセプトもない、純粋なサウンドと歌詞が楽しめるピンク・フロイドの原点ともいえるアルバム。やはり23分の大作「エコーズ」は名曲です。
この曲は目を閉じながら聞くと瞼の裏に光を感じ、キラキラと輝く映像が浮かんできます。
それは「光の画家」と呼ばれたクロード・モネの絵のようであり、「色彩の魔術師」と呼ばれたアンリ・マティス、そして「愛の画家」と呼ばれたマルク・シャガールの絵のようであり「深く、高く、静かに」トリップすること間違い無しです!
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2013年03月22日

5000年前の男「アイスマン」。今証される死の真相!

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六本木の青山ブックセンターで20年くらい前に購入した「5000年前の男 解明された凍結ミイラの謎」です。
最近ご無沙汰していますが、ここの本屋さんはデザイン書をはじめ、科学系・宗教、精神世界系の本がふんだんに揃えられた、1日いても飽きないスバラシイ本屋さんです。

本棚でこの本を発見したときは、思わず「ウォ〜」と心の中で叫びながら即購入。
なんといったって5000年前といったら、日本は縄文時代。世界最古のメソポタミア文明も誕生したばかりだし、エジプトのピラミッドだってまだ1つも建造されていない時代。そんな大昔に生活していた人間のミイラのお話なんです。
1991年9月19日、オーストリアとイタリア国境近くのアルプス山中で、登山者によって偶然発見された凍結したミイラ。発見当時は最近の遭難者の遺体かと思っていたが、調べていくうちに5000年前の人間のミイラであることが判明。しかも完全状態のミイラであり、着ていた服や携帯品も数多く残っていたのです。
そして「エッツィ」というニックネームをつけられたミイラの謎解きが、推理小説のように展開していくのです・・・・。

久々にこの本を取り出したのは、24日(土)NHKスペシャル〈冷凍ミイラ「5千年前の男」を完全解凍〉が放送されるからですが、楽しみですネ。
本書では敵対している部落につかまった「エッツィ」が逃亡中に力つき、死んだのではないかという結論になっていましたが、果たして真相はいかに・・・・?

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2013年02月28日

「小説は書くもので、打つものではない・・・・」

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大好きな吉村昭氏の「旅行鞄のなか」。氏が取材旅行で訪ねた街や、そこで暮らす人々等をほのぼのとしたタッチで綴る宝玉のエッセイ集です。

なかでも「鉋(かんな)と万年筆」という作品が、心をひきます。
ベテランの編集者が吉村氏にこんなことを言ったそうです。「有名な小説家が、初めてワープロを使って作品を仕上げたが、万年筆で書いていた頃のものとは微妙に違う。強いて言えば、匂いが別物なのだ」と。

吉村氏にも、編集者の言うことが理解できた。「小説は書くものであって、打つものではない」。
大工にたとえるなら、私は鉋(かんな)という万年筆を長年使ってきた。その習わしを変えられるはずはないし、変えようなどとは思わない・・・・と。

原稿用紙の枡目に一字一字文字を紡いでいた、真摯な吉村氏の姿が目に浮かびます。
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2012年12月22日

30cm四方のリングで繰り広げられる男たちの熱く静かな闘い。

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SF伝奇バイオレンス小説の雄、夢枕獏が放つ異色将棋格闘技小説「風果つる街」。1987年発行の本書は、今では存在しない「真剣師(しんけんし)」という賭け将棋で生計を立てて生きている、将棋に取り憑かれた男たちの物語です。
たて一尺二寸(約36.4cm)よこ一尺一寸(33.3cm)の四角いリングで繰り広げられる熱く静かなる闘い。それな肉体同士がぶつかり合う闘いよりも壮絶である。脳味噌がぶつかりあい、脳味噌が血反吐を吐く・・・・!
闘っている本人同士にしかわからない命を懸けた静かなる闘い。格闘小説のパイオニアでもある夢枕獏が描く、新たな将棋格闘小説です。

先日お亡くなりになられた、米長邦雄 永世棋聖(九段)の冥福を祈りつつの再読です。
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