2011年09月12日

残暑お見舞い申し上げます。

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残暑お見舞い申し上げます。いっとき過ごし易い日々を経験した体には、ここ2〜3日の厳しい残暑はこたえますネ。まァ、「暑さ、寒さも彼岸まで」というように、後1〜2週間の辛抱でしょうが・・・。 彼岸といえば煩悩を脱した悟りの境地のことですが、この世「此岸」(しがん)に未練を残し亡者となった者は、彼岸に渡ることができずに怨念、執着、情念を抱いて、漆黒の闇から忍びよる幽霊になるのでしょう。
「幽霊」といえば「怪談」。「怪談」といえば小泉八雲ことラフカディオ・ハーンを連想いたします。よく日本人と西洋人の死生観の違いとかを見聞きいたしますが、日本の伝承や昔話がハーンの感性にはマッチしたのでしょうか。「耳なし芳一」や「雪女」等よく知られていますが、私が一番好きなのは「飴を買う幽霊」のお話。我が子を想う母性のすざましい情念に、恐怖よりも哀切感で涙が出てきてしまいます。ハーンの魅力はこの怖いだけでない、幽霊のもつ切なさの描写にあるのです。夏も終わってしまいますが、ハーンの「怪談」で日本人の「心」や「魂」を再認識すのもよいでしょう。
ちなみに上の幽霊画は円山応挙作と伝えられておりますが、真意のほどはハッキリしておりません。足のない幽霊を描いたのも応挙のこの作品が初めてだという説もありますが、それもどうだか・・・。 しかしこのどこか品のある幽霊画は好きですヨ!。


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2011年09月03日

五十にして天命を知る・・・。

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井上靖の最後の長編歴史小説となる「孔子」です。 春秋末期の乱世に生きた孔子と3大弟子の子路、顔回、子貢らの人間像を、架空の弟子が「論語」の詞を解釈しながら淡々と語っていくお話です。伝記物語のようなエピソードや起伏に富んだストーリーはまったくありませんが、十四年にもわたって亡命、遊説の旅を続けた孔子の凛とした姿と、それを敬慕した弟子たちの生き様がひしひしと伝わってくる名作です。「天命とは」「仁とは」。作家井上靖が架空の弟子の言葉を借りながら独自の解釈で語っていきます。 孔子は「五十にして天命を知った」とありますが、五十も半ばになった私は未だ「天命」を知らず・・・。 「天命を信じて人事をつくす」か「人事をつくして天命を待つ」か・・・・・。

論語といえば巻頭を飾る有名な詞、「朋有り遠方より来たる亦、楽しからずや」。いい詞ですネ。原文は「学而時習之、不亦説乎。有朋自遠方来、不亦楽乎。人不知而不慍、不亦君子乎。」  学んだ事を復習することで、より理解を深める。なんと喜ばしいことだろう。遠くから同朋が訪ねて来る、なんと楽しい事だろう!。他人が自分の生き方を理解しなくても、恨む事はしない。それが立派な人の行いだ。

本当、久しぶりに旧友と飲みかわす酒は美味いものです!!。
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2011年08月15日

男は女によって狂気し、女は男によって鬼と化す・・・

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ちくま日本文学全集の「坂口安吾」巻。 風博士、堕落論、白痴、桜の森の満開の下等、14編を収録。 中でも、恐ろしくも美しく哀しい「桜の森の満開の下」はお気に入りの一編です。その美しさにより人を狂わす満開の桜の森・・・。 男は女の美しさによって狂気し、女は男の力にすがって美しい鬼と化す。そして禁断の満開の桜の下にて、美しい鬼は不気味な老婆の鬼と化し、男は無限の虚空の孤独に落ちていく・・・。安吾が奏でる儚くも哀しい、古き良き日本の御伽噺がここにあります。
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2011年08月01日

百万歩の男

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先日アンテナの曲がった東京タワーを見学したついでに、芝公園の東照宮裏にある丸山古墳の頂上にある伊能忠敬測地遺功表を見てまいりました。伊能忠敬の測量の起点となったのが、芝公園近くの高輪の大木戸であったため東京地学協会が、その功績を讃えこの遺功表を建てたそうです。忠敬は49歳で隠居、そして50歳のときに江戸へ出て、幕府天文方にて暦学、天文学を学びます。この天文方での勉学中に緯度1度の距離が暦学上の問題となっているのを知り、56歳にして日本初の実測による全国測量の旅に出ます。井上ひさし著の「四千万歩の男」は、隠居後なお充実した人生を生き抜いた忠敬の愚直な一歩一歩を描いた歴史大作です。五十六歳から十六年間、日本を歩き尽きしたその歩数、四千万歩・・・・! 輝かしくも偉大なる男の、第二の人生の物語です。
ちなみに私は、学生最後の夏休み(30年以上昔の話ですが・・)東京の日本橋から京都の三条大橋まで、テクテクと17日間かけ、歩いていきました。体力が一番あったころの話ですが、忠敬のように56歳にしてそんなに歩けるかは疑問です。京都まで約500キロ、さしずめ
「百万歩の男」になるんでしょうか・・・・!?。
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2011年07月22日

徹底した写実が生みだす、観念の世界。

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高校生の時の現代国語の教科書に、梶井基次郎の「ある崖上の感情」と「闇の絵巻」が例文として引用されていました。小説の一部分を抜粋した数行程度の文章でしたが、初めて読んだときの鮮烈な衝撃は今でも忘れる事はできません。崖の上から垣間みた、人間の喜びと悲しみの荘厳さ。そして恐怖を生む漆黒の闇のなかに存在する、安息の闇。簡素の描写でありながら、梶井独自の徹底した写実感が生みだす観念の世界は、文字を読むというよりは画集を見ている気分に浸ります。高校生の時に買った新潮文庫の「檸檬」には20編の短編が収録。たぶん全作品が収録されているのかと思いますが、個人的には「ある崖上の感情」と「闇の絵巻」そして「桜の樹の下には」が大好きです。「桜の樹の下には屍体が埋まっている・・」で始まる「桜の樹の下には」。満開の桜には、人を惑わす神秘的な美しさがあり、作者はその美しさに幻惑され不安になってしまう。 この短編を読むと坂口安吾の「桜の森の満開の下」を思いだすのですが、あまりもの美しい情景に耐えきれず、死という負のイメージを連想することで心の均衝を保とうとする作者の葛藤が表現されています。肺を病み、憂鬱に心を潰されながら31歳の若さで夭折した作者ですが、死という闇の中に、心安らぐ漆黒の闇を見いだしたのかもしれません。
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2011年07月02日

純粋無垢なる善人達の心温まる寓話です。

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武者小路実篤の代表作である「真理先生」と「馬鹿一」。 真理をこよななく愛する男に、毎日、雑草や石ころばかり描いている売れない絵描き等、この本には純粋無垢なる善人達しか登場しません。しかし登場する善人達はただのお人好しではなく、自分達の生き方に確固たる信念を持った努力家ばかり。今の日本人が忘れてしまった人間の心がここにはあります。読み終わった後にフッと爽やかな気持ちにしてくれる実篤が描くピュアでホットは寓話です。 今年の夏は本棚の隅に追いやられている純文学を読んでみたくなりました・・・。
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2011年05月25日

それは、日本の未来が封印された恐るべきゲーム・・・

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94年発行の今野敏氏の「蓬莱」。この「蓬莱」が私が読んだ初めての今野敏作品ですが、とにかくオモシロイ!!。中国の「徐福伝説」を基にした「シム・シティ」と「信長の野望」をたしたような「蓬莱」というパソコンゲームに隠された恐るべき陰謀。そのゲームには日本の未来が封印されている・・・・!  発行されたのが17年も前なので、読返してみるとゲーム等の話には時代を感じるものの、「徐福伝説」の蘊蓄やストーリー展開は抜群。歴史好きな人にはお薦めかも!! 「信長の野望」が大好きな私としては、こんなゲームがあったら最高です。今野敏氏は警察小説をはじめ格闘物やSF伝奇物等、著書は多数に及びますが、個人的には警察物が一番オモシロイです。今TVで放映されている「ハンチョウ 神南署安積班」も原作は今野敏氏です。「蓬莱」にも安摘警部補が登場いたしますが、原作はクールで渋く、もっとカッコいいですヨ。  ちなみに読売新聞の夕刊に今野敏氏の「ペトロ」という小説が連載されていますが、こちらも警察小説で「触発」『アキハバラ」「エチュード」に登場した警視庁の碓氷刑事が活躍するお話です。話の内容は「神代文字」や『ペトログリフ」など古代史ミステリーを絡めた警察小説のようで、「蓬莱」を彷彿させるものと期待しております!!。
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2011年05月20日

大衆と決別した作家、江戸川乱歩!

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推理小説の類いは一度読んでしまうと再読するということは滅多にしませんが、乱歩の小説は何度読んでも楽しめます。本書「江戸川乱歩傑作選」は、日本における本格探偵小説の幕開けである「二銭銅貨」をはじめ、名探偵 明智小五郎が初めて登場する、密室殺人事件を描いた「D坂の殺人事件」、他に「芋虫」「人間椅子」「心理試験」「屋根裏の散歩者」等、乱歩の初期の代表作が収められています。乱歩の代表作でもある処女作「二銭銅貨」は、南無阿弥陀仏という言葉に隠された暗号を解読するというもので、このような特異な暗号コードを考えだした乱歩の才能は賞賛に価します。 しかし乱歩といえば淫美でエロ、グロ、猟奇的小説家だと思われがちですが、彼自身 猟奇的な事件が起きると犯人は乱歩だと投書されたり、マスコミなどにより彼自身の日常が猟奇的であるとの虚像が作られ、そんな大衆に嫌気が差し筆を絶ってしまいます。また太平洋戦争開始後には、警察等の検閲により、乱歩作品は全て絶版に。そんな苦しみの中、彼を救ったのが少年倶楽部に掲載した怪人二十面相が登場する、ご存知「少年探偵団シリーズ」なのです。大人たちの揶揄によって筆を絶った乱歩を救ったのは、幼気な、なんの邪心も持たない子供達だったのですネ・・・。
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2011年04月30日

我々は日本列島という巨大な時限爆弾の上で生活をしているという事を肝に命じねば!

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連日放送される「東日本大震災」のニュース。 ふと、「宮崎の新燃岳は今どおなっているのだろう・・・?」と思いました。そんな折り、本棚にある石黒耀氏の「死都日本」に目が止まり、再読する事に。2002年に処女作として発行された本書は第26回メフィスト賞を受賞。
西暦20XX年、宮崎県沖で巨大地震が発生。そして30万年前に巨大噴火を起し、南九州を焼き尽くした霧島山地下にある加久藤火山が破局的大噴火を起し日本全土をパニックに陥れるクライシスノベルです。時速数百キロで迫り来る土石流、火砕流、火山泥流の凄さ。また数千キロの空を覆う火山灰やナノ粒子的な硫酸エアロゾルによる通信網やコンピュータ等の電子機器の破壊。そして自国経済の安定に躍起になるアメリカ政府と東シナ海で暗躍する中国原潜。日本はこのまま滅び、生き残った日本人はボートピープルとなり彷徨い続けるしかないのか・・・!? 壮大なストーリーと徹底したリアリズムで、読者を飽きさすことなく一気に読ませてくれる傑作です。 世界の「地震」と「火山」の1/10を引き受ける地変の国、日本。 常に巨大な時限爆弾の上にいるのだと言う事を肝に命じながら生活をしていかなければならない事を再認識させてくれます。
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2011年03月31日

巨大ローファームの暗躍に、警察、検察、公安の威信を懸けた戦いがはじまる!

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深夜の横浜本牧埠頭の倉庫街で、警官が射殺される事件が発生。倉庫の中には旧ソ連で開発された特殊部隊用のPSSサイレントガンが大量に見つかる・・・。そして横浜の巨大ローファームに暗躍するロシアン・コネクションの影。
現役弁護士である中嶋博行氏の法曹界をテーマにした、1955年発行のリーガルサスペンスの第2弾です。今回の「違法弁護」は司法試験合格者の増員による弁護士人口の増加による、弁護士事務所の飽和問題がテーマになっていますが、それに絡むように神奈川県警、検察、公安の内部派閥争いが展開し、なかなか面白いストーリーになっております。
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2011年03月08日

一階には現実、二階には夢。そんな人生を行きたい!

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「鉄の骨」「空飛ぶタイヤ」等の著者、地井戸 潤氏の「下町ロケット」。久々に面白い本に出逢えて一気読みです。
中小企業VS銀行、大手企業。 度重なる難題に窮地に落ちながらも、中小企業の意地と誇りにかけて立ち向かう主人公の佃社長に拍手喝采です。「人は何のために働くのか!?」そして「誰のために働くのか!?」。 一度は挫折したロケットエンジン開発という夢にかけ、毅然と大手企業と渡り合う佃社長と社員達。果たして種子島の空にロケット雲はたちのぼるのか・・・・。 読み終わった後に爽快感が残る本でした。 そおいえば、この本を読んだら急に大好きな映画の「庭から昇ったロケット雲」と「遠い空の向こうに」を観たくなりました。
男の子って、やっぱしロケットが好きなんですかネ!
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2011年02月21日

何を守り、誰のために死ぬのか!?

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「宣戦布告」「ゼロ」「外事警察」等の著者、麻生 幾の最新刊「奪還」。今回は海上自衛隊の特殊部隊、特別警備隊(SBU)をテーマにしたアクションものです。海上自衛隊の特別警備隊 小隊長の河合は自分の正義を貫くために、自衛隊を辞し民間人となるが、そんな彼に再び日本政府より極秘の特別任務が発令。二つのメガ台風が接近する与那国島へ、人質となった61名の島民と機動隊を救出すべく、昔の部下を引き連れ修羅場と化す地獄へと向かいます。しかしこのミッションの裏には、日本政府が決して明かす事ができない驚愕の事実が・・・。
麻生氏の小説は「平和ボケした日本への警鐘」をテーマにしたものが多いですが、今回もご多分に洩れずその流れですがアクション小説に徹しているので、読みやすさ、面白さは抜群です。 物語の最後で、祖国の為に命を落としたにもかかわらず、訓練中の事故死としてかたずけられた部下達の葬儀で嘆き哀しむ家族の描写は、ちょっとホロリときてしまいます。
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2011年01月27日

愚者にして聖者なり!

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昔、ある人から勧められて読んだ遠藤周作さんの本。その本が面白く、それがきっかけとなり遠藤氏の本を貪るように読みました。「狐狸庵山人」の雅号でのユーモアエッセイをはじめ、氏自身がカトリックの信者であることからキリスト教をテーマにした著書も多数あります。
「海と毒薬」「おバカさん」「沈黙」「イエスの生涯」「最後の殉教者」「悲しみの歌」「侍」「深い河」等、キリスト教を主題にした作品が個人的には好きですが、遠藤氏自身は「日本人でありながらキリスト教徒である矛盾」ということで葛藤しておられ、それは「だぶだぶの洋服を和服に仕立て直す作業」のようなものと表現しております。
1959年に発行されたこの「おバカさん」は、遠藤氏の中でも一番すきな小説です。愚鈍で臆病で、とびきりのお人好しのフランス人「ガストン・ボナパルト」がふらりとやって来た日本で巻き起こす騒動をユーモアをまじえながら、日本人にとって神とは何かを問う崇高な物語です。人の悲しみを自分の悲しみにしてしまうガストン。慈愛に満ちたその行いは、日本に再臨した「イエス」を読むものに想像させるが、遠藤氏自身は物語の中ではそのことは一言も語っておらず、それが作者がだした答えのようでもあります・・・・。
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2010年12月18日

探求してはいけない。自由な心で見いだすのだ・・・!

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ヘルマン ヘッセの「シッダールタ」を再々読です。 この物語の主人公である沙門「シッダールタ」は、正等覚者の仏陀「ゴータマ・シッダールタ」と同性ですが別人として描かれています。親友と二人沙門となるべく苦行に励みながらも、やがて仏陀を捨て、親友を捨て、愛欲と贅沢な暮らしに溺れるシッダールタ。その生活も彼にとっては答えではなく、また昔の探求者のように全てを捨て、さまよい歩きます。そして川の渡し守の老人と出逢い、川という自然の産物から彼は多くの事を学んでいきます。物語の最後、老人となりながらも未だ沙門として探求の道に悩む親友と再会を果たしますが、シッダールタは彼にこう諭します。「知識は伝えることができるが、知恵は伝えることができない」そして「探求してはいけない。目標を持つことで反対に目の前の様々なものが見えなくなる。自由な心で見いだすのだ!」・・・と。
30代、40代で読み、50代でまた読み返しましたが、その都度深い感銘を与えてくれる小説です。西洋人ヘッセが描く、東洋ブッディズムの真髄といえるでしょう。ビジネス書や専門書は苦手でけっして読みませんが、本書は自分にとっての啓蒙書であり60代、70代になってまた読み返したい一冊です。
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2010年11月04日

蔦屋重三郎が仕掛けた最大の謎!?

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寛政6年からおよそ10カ月の間で、140点あまりの浮世絵を残し忽然と姿を消した「写楽」の謎に挑む、島田荘司の大作「写楽 閉じた国の幻」。写楽を一躍有名にした、役者の顔を大胆かつ滑稽なほどにデフォルメして描いた大首絵は、当時の浮世絵界では決して受け入れられるものではなく、また本名、生没年、出身地すら謎である「写楽」とは一体何者であるのか? 物語はある浮世絵研究家が一枚の肉筆画を入手したことから始まります。そして「平賀源内」説に始まり、答えはやがて途方も無い人物にたどり着きます。それは当時、人気を得たばかりに傲慢になった浮世絵界、歌舞伎界へたたき付けた蔦屋重三郎の挑戦状であるともいえるでしょう。これは「ありえるかも」も納得する展開です。
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2010年10月20日

幕末の動乱、捕鯨に命を懸けた漢たち!!

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「私はこの本を書くために日本にやって来た!」と語る、探検家・冒険家そして小説家であるC.W.ニコルさんの「勇魚(いさな)」です。
物語の主人公は、紀州の太地で捕鯨に命を懸ける、若き漁師の勘助。しかし彼は鮫に片腕を奪われ失意の底に落ち込みますが、ある日紀州藩士、松平定頼という武士と出逢います。定頼は幕府の衰退と日本の将来を案じ、海防の重要性を説き、熊野海賊の末裔で組織だった捕鯨を行なう太地の鯨取りを日本の沿岸警備軍の中核に据えようとしていたのです・・・・・。  本書は日本人の捕鯨の正当性を描き、また動乱の幕末を背景に海という自然と戦い、開国という未知の世界に立ち向かう、一人の鯨取りを描いた激動と感動の物語です。そしてこの物語はこの「勇魚」にはじまり、日英同盟を背景に対独参戦した第一次大戦の日本海軍の史実を描いた「盟約」「捜敵海域」「特務艦隊」という壮大な海戦ドラマに展開していきます・・・・。
残念ながらこの「勇魚」上下巻は、絶版になってしまっているので中古本で探すしかないですが、面白いですヨ!
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2010年07月25日

無知なる幸せ、知識あるがゆえの苦悩・・・。

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ダニエル・キイス著の「アルジャーノンに花束を」。 精神遅滞者の主人公チャーリーは、ネズミのアルジャーノンに施され成功した知能指数を高める手術の、初の人体実験に選ばれます。始めはIQ68しかなく、実験用ネズミのアルジャーノンにさえ劣る彼でしたが、手術後は知識を得る喜びに目覚め、アルジャーノンを追い越し、そして自分を手術してくれた大学の教授や博士たちをも凌駕してしまう超知能をもった天才に生まれ変わります。しかしその反面、知識を得た事により今まで精神遅滞者として自分が受けてきた不条理な境遇や人間の醜さを知る事で、知能と心のバランスをとることができなくなり、孤独と葛藤、そして苦悩の日々に追い込まれ、悲しい現実につきあたります・・・。
最後の「アルジャーノンにお花をあげてください・・・」は、もう号泣ものです!
そおいえば、アニメの「攻殻機動隊」に登場するAI搭載の思考戦車タチコマの愛読書になっておりました。彼らも記憶を並列化されることを嫌い、知識を得ることに貪欲になり、最後はラボ送りになってしまいましたが・・・。(タチコマの最期も健気で号泣ものでした!!)
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2010年06月13日

文化人類学者が描く痛快冒険ファンタジー!

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日本にも「指輪物語」や「ナルニア国ものがたり」「ゲド戦記」に匹敵するファンタジーノベルがあったんだと、読み終えて感激した上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』です。
昨年NHKにて放映されていた神山健司監督、プロダクションI.Gスタッフによるアニメは観ていましたが、原作についてはまったく知りませんでした。もともと児童文学というジャンルで出版されており、「守り人シリーズ」として全10巻あります。
著者の上橋さんは文化人類学者であり、先住民族アボリジニの研究をしているということだけあって、先住民の伝承などをうまく取り込み、神話や聖書などを題材とした西洋のファンタジーとは一味ちがった、親しみやすい物語です。
上橋さんが〈あとがき〉に、古くから人々が語ってきた「語り物」の骨格をもつがゆえに、子どもでも楽しめる物語。それでいて、大人が読んだときにには、大人であるがゆえの発見があって楽しめる物語。と書いてありましたが、まさにその通り!
これで当分読む本には困らないぞ・・・・!
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2010年04月15日

この世で一番短い「呪(しゅ)」それは名前だ・・・

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夢獏獏さんの「陰陽師シリーズ・夜光杯ノ巻」。「月琴姫」他8本のお話からなる短編集です。一話目の「月琴姫」はその昔、吉備真備が唐よりもち帰り帝に献上した琵琶のお話。
この琵琶を当代随一の笛の名手「源 博雅」が帝より借り受け、その美しい音色に心酔した博雅がその琵琶に名前を付けてしまったことが事の発端になります。
主人公の陰陽師・安倍晴明がよく、「この世で一番短い呪(しゅ)、それは名前だヨ」というセリフがあります。知らない「人」や「物」に名前を教えたり付けたりすることで、そのモノと「縁(えにし)」が結ばれてしまうんだとか。
たしかに雑踏のなか、後ろから自分の名前を呼ばれたら絶対に振り返るだろうナ。これも呪といえば呪だし・・・。
獏さんの格闘技系のお話もオモシロイですが、個人的にはこの手の物語が好きですね。
日本語ってこんなに美しいだナァ〜っと、しみじみ思える物語です。
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2010年03月21日

キリストは清貧であったか、そして笑わなかったのか?

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やっと20年位前に買ったウンベルト・エコーの「薔薇の名前」を読み終えました。記号論者であるエコーがこの処女作である小説を発表したのは1980年。たちまち世界的ベストセラーとなりイタリア文学界最高である「ストレーガ賞」を受賞し、当時は今世紀最大の問題小説となりました。私も日本語訳が発売されてすぐに勇んで読み出したまではよいのですが・・・。 なんと上巻の3分の1ぐらい読んで挫折してしまいました。ストーリーは中世北イタリアの僧院で「ヨハネの黙示録」に従った連続殺人が起きるという単純なものですが、フランシスコ会とアヴィニョン教皇庁との間で起きたキリストの「清貧論争」や「異端審問」の話やアリストテレスの「詩学」や「神学論争」など聖書やキリスト教神学からのさまざまな引用文が多く、さすが記号論者が書いただけはあって難解というか、理解できないというか、結局本棚の中に20年間眠っていたわけです。
学生の頃から仏教美術は好きで、その手の本は読んでおりましたが、ここ数年いろいろな宗教の本も読み、昔よりは多少理解できるかなと思い、今年になって再チャレンジを試みた次第です。まァ、その甲斐あって2カ月くらいかかってしまいましたが、なかなか面白く読み終えることができました。
ただタイトルの「薔薇の名前」って一体何なのだろうという疑問が残りましたが・・・。
本を読むのがメンドーだという方にはショーン・コネリー主演で映画になっておりますので、そちらがお薦めですネ。
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